自然のまま。ありのまま。ひがしこうち旅

Vol.03

お母さんたちの大奮闘!笑あり涙ありの食堂おこし

奈半利のおかって 地元のお母さんたち

その場所は言ってみれば、この町そのものなのかもしれません。
その場所は、お母さんたちの笑い声と、幼い頃台所で「ねえ、お母さん、ご飯まだー?」なんて
せがみながらかいだ、あの香りで満ちています。
なつかしくて、あったかくて、おいしそうで。
そして、訪れた人誰しもが、思わずこう言ってしまうのです。
「初めて来たのに、ほっとする」。

これは、小さな小さな町で起きた、定年を過ぎたお母さんたちのセカンドライフ。
笑あり、涙ありの波乱万丈奮闘記です。

食べて美味しい、嗅いで美味しい、話して楽しい。五感のすべてが満たされる場所。

奈半利町。
美しい海に囲まれ、沖合に200mも出れば色とりどりのさんごが見られる稀有な場所です。
その町に、2016年春に新しい施設がオープンしました。
それが「奈半利のおかって」。
奈半利産のお野菜やお魚にこだわって、1つ1つお母さんたちが手作りしたお弁当や、焼きたてのパンが大きなカウンターの上に並んでいます。
お弁当は色とりどりのおかずがキラキラ輝いて、まるで宝石箱のよう。
量や内容も、女性の方向けに少量多品種を詰め合わせたものや、男性向けにボリューミーなもの、日替わりで毎日食べても飽きないように工夫したものなど、種類も豊富。
さらに、お弁当に使われているご飯は、お店の中心に大黒柱のように鎮座する、おくどさんで炊かれています。
目に入るはゆらゆら揺れる暖かい火、耳に入るはおくどさんに焚べる薪のパチパチという音、そして鼻をくすぐる炊きたてのご飯のにおい!なんて身体全部が美味しい場所なんでしょう。

まちを活気づけたふるさと納税が、お母さんたちにも火をつけた。

奈半利町は、いちはやくふるさと納税に目を付けて、消費者戦略をはかってきました。
当時はまだ少なかった魚介類の返礼品をもうけたり、タイムセールを行うなど、斬新な手法でふるさと納税の利用者を拡大してきました。
その実績は、この小さな町をふるさと納税ランキングで2位に輝いたことも。
奈半利のおかっては、そんなふるさと納税の返礼品の幅を広げることを目的に作られた加工施設です。
施設ができて、さて誰が中心になってやっていこう、という時に、白羽の矢がたったのが地元の女性たち。
施設ができる前から、味噌など昔ながら食品の加工を行っていました。その知恵と経験を生かしてはみないか、と町から直々にオファーがかかったのです。
その中心人物だった広末さん。
お声がけいただいた当初はとても迷ったそう。
「こんな年だもの、できるかも自信がなかったし、それにみなさん定年されて、旦那さんと2人穏やかな生活をされていたから、こんなことに誰がのっかってくれるかしらって心配だったの。
だけど、ふるさと納税が始まってから町が活気づいていく様子を中で見ていたから、私も何かやらなきゃ!って思ったの。
そう思ったのは私だけじゃなかったみたいで、声をかけた人が新しく誰かを連れてきてくれてね。
芋づる式にたくさんの人が集まってくれたんです」

お客さんとの関りは、お母さんたちの宝物。いつしか生きがいとなった、この場所。

そうしてついに、2016年5月、奈半利のおかってはオープンを迎えました。
オープン前からドタバタだったけれど、オープンしてからもお母さんたちの激動の日々は続きます。
1人1人にお話を伺うと、笑いながら、時には涙を見せながら、今日までの歩みをお話してくださいました。

「最初は売れ残りもそりゃああってね。奈半利産のものをいっぱい使ってるから、食材への申し訳なさも一入(ひとしお)でね。行商みたいに外に商品を持って売り歩いた時もあったわねえ。ほんと、今思うと笑っちゃう!だけど、そんな日もあったから、商品が売り切れると本当に嬉しいのよね」

「徳島から来た小学生の男の子がね、お弁当を買ってくれてね、隅っこに残ったご飯の粒まで1つ1つ全部食べてくれたの。こんな美味しいご飯食べたことない!って。それで、お礼に阿波踊を見せてくれたの」

「最初は採算なんて到底とれなくて、野菜は家からの持ち寄り、調理器具も家からの持ち寄りよ(笑)。お金にも全然ならないし、周りからは頭がおかしいなんて言われたわ。大変だったけど、いつの間にかこれが生きがいになっている。今日までやってきてよかった」

お母さんたちの言葉には、今日までの苦労や涙、そして奈半利のおかってへの愛が満ち満ちています。そんな愛溢れる場所に吸い寄せられるように、大人から子どもまで、お客さんがひっきりなしに入店します。

日々進化する奈半利のおかって。日々成長するお母さんたち。この笑顔に会いに、遊びに来てくださいね。

お店の立ち上げ当初から、アドバイザーとして関わっていらっしゃる中村シェフ。奈半利のおかっての構想ができた頃から、メニュー開発やオペレーション整備に奔走してきました。

「最初は接客業もされたことのない方が大半だったので、もうてんやわんやです。3歩進んで2歩下がるような日々だったけれど、やっとここまでこれたなあと思います。」

「先生には鬼軍曹のように怒ってもらってね(笑)、でもやっとここまでこれました」

広末さんと顔を見合わせて、親子のようにコロコロ笑います。

「だけどまだまだこれから先も課題はたくさん!新しいメニューの開発もしないといけないですね。」

1日1日と進化する奈半利のおかって。
小さな町に住むお母さんたちの、大きな大きな愛に触れられるあたたかい場所に、ぜひ一度帰っていらしてください。
初めてでも「おかえり」って出迎えてもらえるような、そんな場所がここにあります。

お母さんたちに会いに。

奈半利のおかって

ごめん・なはり線の奈半利駅降りてすぐにある、奈半利のおかって。地元のお野菜やお魚にこだわった優しい味のメニューがいっぱい。週末、木~土の営業です。

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